アメリカにはリーダーとしての意識を取り戻してもらいたい

1.トランプ大統領の高関税による輸入制限を打ち出し、EU、中国等が対米報復関税に踏み切ることを打ち出した。ロシア、インドも報復関税をかける考えを示しているという。

第二次世界大戦は、保護貿易がその原因の一つであったとの反省に基づき、戦後は自由貿易体制を確立しようと、アメリカが主導してGATT、その後はWTOがつくられ、世界秩序はその流れの中にあったといえる。WTOが190カ国以上の国々の全会一致がなければ決定できず、ドーハ・ラウンドが座礁して動きがとれなくなった中、それなら気の合ったもの同士でやろうということで、二国間FTA(自由貿易協定)、TPP(環太平洋経済連携)などの動きにつながった。

しかし、トランプ大統領のTPP離脱にとどまらず、今回の高関税による輸入制限等の動きは、「報復」の連鎖を呼び起こしつつあり、戦後アメリカが主導してつくった自由貿易に向かう世界秩序を崩壊に導きかねない。

自国さえ良ければよいという「アメリカ・ファースト」の考え方は、アメリカが世界のリーダーとしての意識が希薄になったことを表しているのではないか?と危惧するものであり、アメリカにはリーダーとしての意識を少しでも取り戻してもらいたい。しかも、アメリカ・ファーストは、結局はアメリカにとっても得にならず、損することになる。それは歴史がはっきり示している。

2.もう一つ大変危惧するのは、アメリカが国連の人権理事会を離脱を決めたことだ。反イスラエル的であるというのが理由というが、これもアメリカがもはや世界のリーダーではなくなったのではないかとの懸念を強めさせるものだ。

戦後、アメリカが主導して、国連を創設し、加盟国に武力の行使を禁止することによって、戦争をなくそうとの努力を重ねてきた。これも戦後世界秩序の柱の一つだ。確かに、国連は戦争をなくすとのミッションをうまく果たせていない。しかし、他に代替し得る仕組みもなく、国連を大事にする意味は有る。今回のアメリカの離脱の理由は「反イスラエル的」であるというものであり、それはアメリカの中間選挙という国内的な視点である。

3.日本としては、戦後、吉田路線に乗って、安保はアメリカに任せて、日本は経済中心でやっていくとの基本路線できた。それは、アメリカ主導の戦後世界秩序があって成り立ったものでもある。トランプ大統領のアメリカ・ファーストはいろいろな面で影響が大きい。